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設立の趣旨

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1. 古典言語の重視
当研究センターでは、日本の古語及び西洋古典言語(古代ギリシア語・ラテン語)の読解に力を入れている。大学の一般教養でも第二外国語として現代西洋語を選択するのが一般的で、西洋古典言語にまでなかなか行き届かないというのが実情である。しかし、現代西洋諸語の理解が、その根本にある西洋古典言語の素養によって、大いに深められることも事実である。また、言語は本来文字のみならず音声と一体になって存立するものであることから、当研究センターでは、プラトン・アリストテレスをはじめとする古代ギリシア語原典の講読ビデオを独自で制作するとともに、定期的に読書会も開催する予定で、文字だけでなく音声面からのアプローチも図っている。

2. 原典の重視
第一の点とも関わることであるが、ここで原典というのは、古典に限らず、現代語の文献も含めて、翻訳・解説書から一旦離れて、第一次文献をその著作が書かれた言語で読むことを意味している。なるほど、多くの重要な文献はすでに邦訳ないし英訳されていて、学術研究に不足はないように見える。しかし、歴史文化研究においては自ら原典にあたる姿勢が極めて重要で、それ自体が興味深いことであるというだけではなく、原典にあたることによって、第二次文献からとは違ったイメージが得られることも珍しくない。また、翻訳では真意を汲み尽くし難い箇所も、それは必ずしも翻訳に問題があるということではないが、原典にあたることによって文意がより明確になることもある。

3. 論理学・数学の哲学及び科学基礎論研究
当研究センターは、理論哲学に関しては、論理学・数学の哲学及び科学基礎論分野の研究に重点を置いている。古典論理学のレーヴェンハイム・スコーレムの定理とその帰結としてのスコーレムのパラドックスは、ある文の真理値はそれが置かれている概念枠に依存しているというモデル論的思考を哲学的に含意し、概念枠から独立したユニークな完全な世界の記述の否定に傾く。このような観点から、クワインの翻訳の不確定性や科学理論の決定不全性もパトナムの形而上学的実在論から内在的実在論への転向も明確な意義を帯びてくる。クワインの背後にある問いは、「相互に矛盾しながら内的に斉合的な複数の理論があり、経験的にどちらの理論でも説明できる場合に、どちらの理論を選んだらよいか」ということであり、クワインはユニークな真なる科学理論の可能性に懐疑的であり、文の真理値は背景理論に相対的であると主張する方向に進む。このようなモデル論的思考の可能性と限界をプラトン主義と対比させながら考察し、また本質存在と事実存在の関係にも着目することによって、自然科学の対象と数学的対象の存在性格の相違も明らかになるであろう。また、非古典論理の中でも様相論理は、可能世界論への応用を含んだ興味深い分野である。

4. 義務論的倫理学の探究
実践哲学に関しては、義務論的倫理学の探究が当研究センターのメインテーマである。道徳の基礎づけに関しては基本的に二種類の対立がある。一つは、道徳的判断の認識上の身分に関して、記述主義と反記述主義(指令主義)の対立である。即ち、道徳的判断が事実の記述に還元可能かどうかという問題であり、これは認知主義と反認知主義の対立、即ち、道徳的判断が真理値をもつかどうかという問題にも関わる。ここで注目すべきは、道徳的判断は単に事実の記述には還元できないが、真理値はもつという反記述的認知主義の立場である。もう一つは、実質的な道徳原理の採用に関して、帰結主義(功利主義)と反帰結主義(義務論)の対立である。義務論者は、善の最大化を旨とする功利主義がとりわけ少数者の権利を侵害するケースがあると主張する。当研究センターでは、古代から現代に至る社会契約説の伝統を踏まえ、功利主義者の反論も念頭に置きながら、義務論的倫理学の可能性を探究している。さらに、応用倫理に関しても、ビジネス倫理、環境倫理、生命医療倫理等から身近な事例を取り上げ、古典倫理学の理論に照らして現代社会の倫理的諸問題を闡明する試みに挑んでいる。

5. 学際的包括的な歴史文化研究
当研究センターの目的は、以上の点を踏まえて、日本及び西洋の歴史文化研究を学際的包括的視野に立って行うことであり、当研究センターの名称も歴史によって主として時間軸を、文化によって空間軸を表す意味を込めて、歴史文化学際研究センターと名付けられた。第三の点で取り上げたモデル論的思考にも関わることであるが、歴史文化研究において特に重要なのは、自分の置かれている時代や文化を相対化する視点である。即ち、あらゆる時代や文化を貫く共通の価値というのはないのであって、コトの善悪はそれが置かれている時代や文化の中ではじめて意味をもつという発想である。しかしながら、第四の点で取り上げた義務論的倫理学の探究にも関わることであるが、歴史や文化の違いを超えた普遍的な価値もまた追求されるべきであり、それは社会構造に関わらない基本的な価値ということでもある。そのような探究は、現在、学問の専門化、細分化が高度に進む中で、また、自然主義的傾向が一層強まる中で、なるほどますます難しくなってはいる。しかしながら、高度に専門化され細分化された個別科学の知を有機的に連関づけ、統一的体系的な世界像を構築する試みも一方で粘り強く続けられなければならない。

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